長谷川さん
情事後は、さらにお互いフランクになった。
その中で長谷川さんの性格がより明らかになってきた。
長谷川さんは、10年ほど前は四国で結婚生活を営んでいた。そこでやよいちゃんが生まれた。しかし、姑や旦那との軋轢が原因で離婚、そして地元に戻ってきた。仕事は今の某保険会社に勤務することになる。四国でも同じ保険会社に勤務していたが、一旦辞めて、再入社という形になった。それから、鬼のように働いたようだ。何本も契約を取り、新人を採用し、飛ぶ鳥を落とす勢いで駆け上がっていった。仕事人間、一時期は、「S支部に長谷川あり」と言われるほど、県に広がる知名度を誇った。その成績を支えているのが、長谷川さんの「誠実さ」と「速さ」だ。裏表なのない性格で相手の懐に入り、冗談混じりの会話を繰り広げる。思ったことをそのまま言うのだが、嫌味に聞こえないところがすごい。実際に商品を紹介する時には、自社の商品でも客に合っていなければ勧めず、他社の商品でも内容が良ければそのまま掛け続けることを勧める。つまり、「お客さんファースト」で仕事を考えている。保険は、自分の大事なお金を支出し、時には年間に数十万、十数年で何百万になることもある大きな決断を迫られるものだ。そこの決断を信頼のない人には任せられない。長谷川さんは、小手先の技術よりも大切なことを持ち合わせていた。もう1つが、何よりも遅いことを嫌う。アポ1つとっても、今その場で行動する。持ち帰らない喋りが遅いのも呑気にしているも見るだけでもイライラするようだ。ちゃっちゃと済ませないと気持ち悪いと感じるため、より多くアポを取ることができる。分母が大きければ、それだけとれる契約も多くなる。プライベートでも、それは発揮される。すぐに検索したり、予約を入れるのだ。LINEした数分後に「ここ、取っておいたよ。」と連絡が来ることが常だ。
さらに驚くべきは、経済力だ。保険会社の給与システムについて詳しくは分からないが、基本給+出来高のような感じだ。商品にもポイントがついており、契約件数の分だけポイントが加算される。ポイントが大きい商品は継続的な掛け捨て保険だ。保険料が高ければそれだけポイントが高いようだ。また、新人を入れることを「採用」と呼ぶが、採用すること自体も自分の大きな成績になる上に、新人の成績の一部も自分の成績となる。そのため、新人を入れれば入れるほど、自分への見返りが大きいということになる。長谷川さんは、2人採用し自分の出張所を持つまでになり、所長と呼ばれる地位についた。自分の2、5倍。年収1000万円越えの上位15%の人種だった。
そんな長谷川さんはアゲまんなのか、夏休みのパチンコは調子が良く、1週間で25万も勝ってしまった。それを報告すると「私のおかげやな。なんか奢ってもらなわ。」といつも言うのだった。
長谷川さんの一端を紹介したが、ほんの一部であり、まだまだ特異なところがたくさんある。それは、追々紹介させてもらうことにしよう。
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