教師と保護者の恋愛小説「わかっているけど」(22)

小説

長谷川さん宅にお邪魔する機会が多くなるにつれて、癖が強い長谷川さんの生態がまた一つ明らかになってきた。

まずは、耳くそを欲しがる。

聞いたことがない。いくら好きだからとはいえ、耳くそまで欲しがる人はいないだろう。

「先生の耳くそ欲しーい」

「はい?」

好きな人のものが汚くないと思うのは、分からないではないが、何も耳くそを欲しがることはないだろう。

冗談かと思っていたが、後日聞いたら、耳かきをしてもらった時のものをティッシュに包んでとってあるらしい。変な人。

次に、トイレの匂いを嗅ぐ。

しかも僕が大をした後にトイレに入りたがる。

これには理由がある。あまり僕には理解できないけれど。

以前僕と長谷川さんのトイレをしたいタイミングが重なったことがあった。

長谷川さんはお先にどうぞと言って、僕が先に入り、大きい方の用をたした。

スッキリしたらその時に限って、消臭スプレーをするのを忘れた。長谷川さんがトイレに入ってから「しまった。」と思ったが、遅かった。

親しき仲にも礼儀あり、でそういうところはまだ大切にしたかった。

長谷川さんが扉を開け出てきた。

僕は謝ろうと思って顔を見ると、長谷川さんがニヤニヤしていた。

どうしたの?と聞くと、「先生の、お父さんの匂いがした。」というのだ。

今は亡きお父さんが大好きだった長谷川さんにとって、僕の匂いがお父さんのそれと重なったのだ。

臭かったやろ?と聞くと、

「全然、むしろいい匂い。お父さんを思い出したわ。ほら、バイキン臭い匂いってあるが、あれは嫌なんやけど、先生とお父さんのは男臭い優しい匂いなんやって。」

全然分からないが、そういうことらしい。

それからというもの、大をしようものならすぐに入ろうとするのだ。

男もあるのかもしれないが、女の人は匂いに関して独特のフェチシズムがあるような気がする。

耳の裏の匂いが好きとか、タバコの匂いが落ち着くとか、なんとなく匂いが無理とか・・・

一緒にいようとする人の匂いは確かに大切で、それは育ってきた環境によるところも大きいのかもしれない。

匂いばっかりはよほど生活習慣を変えない限り変わらないものだと思う。

だから、好きな人の匂いが好みかどうかはギャンブル的だが、長く付き合える人かどうかの判断材料としてはあながちバカにできないものかもしれない。

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