教師と保護者の恋愛小説「わかっているけど」(25)

小説

安い買い物ではなかったけれど,自分の好きなものを買うことは心が満たされる。

車もそうだが,洋服や食べ物においてもそうだろう。

それぞれ価値観が違い,車にお金を使う人もいれば,洋服,食べ物に使う人もいる。

もしくは,貯めるだけの人もいる。

お金の使い道は違えど,心をすり減らしながら稼いだお金は,心の安定や豊かさに使われるべきだと感じた。

新車を購入してからの僕は,金融機関へのローンレンジャーではなく,長谷川へのローンレンジャーとなった。

金利はないが,違う形で金利を払うことになるだろう。

ちょうどこの頃,僕が住んでいる離れのリフォームもし始めた。10月半ばからのリフォームは11月半ばくらいに終わった。800万。

はっきり言って,1階部分の3分の2程度をしただけなのに,こんなにとられるものなのだろうか。

父が大手リフォーム会社との打ち合わせをしてきたのだが,確か材料費は300万程度だったような気がするのだが,500万も何に上乗せされているのだろうか。

建築業界は門外漢なので,全然分からない。なんとなくぼったくられた気分だ。

と言っても,自分は100万しか払わなくてよかったのだから,あーだこーだ言える立場ではない。

この年は車に120万,リフォームに100万とよくお金が出ていく年だ。

さらに,長谷川さんと冬に向けてダウンを買った。その時の話をしよう。

僕は大学生の頃から友人に教えてもらった店で服を買っていた。それなりに綺麗めに見えるような服を好んで着ていた。

田舎で車社会なため,外を何十分も歩くことはない。そのため,セーターも持っていないし,アウターも薄いものしか持っていなかった。雪深い地域に住んでいるくせにw

「先生,ようそんな寒い格好できるわ。ダウン買いねって。あとセーターも。」

実は,長谷川さんと出会ってから,ファッションコーディネーターは長谷川さんに代わっていた。

夏場も今までは履かないような明るい色のハーフパンツを履くようになり,ポロシャツもラルフローレンのものになっていた。

この冬のアイテムは,ダウン。ダウンを買いねと言われて店を訪れると,ダウンのなんと高いこと。

「こんなん買ったら財布が寒くなるやん」て話していると,

「一回着てみてねって。」と進める長谷川さん。

コーディネーターに言われるまま試着をしてみる。

軽さと暖かさに衝撃を受けた。

ダウンの下はTシャツでいいくらい暖かい。

「あんな安い重いのなんか着てられんやろ,しかも寒いし。」

僕にとっては新しい発見だった。

ブランド差で価格が違うのも多少はあるかもしれないが,明らかに品質が違うのだ。

どうも安価なものと高価なものではダウンの中身が違うらしい。綿かダウン(水鳥の羽毛)か。

しかおダック(アヒル)よりもグース(ガチョウ)の方が良質で価格が高いらしい。

まぁダウン談義はいいとして,その場で買わずに少し勉強してから買うことにした。

調べて見ると,有名どころとしては,モンクレール,ドゥベティカ,カナダグース,ノースフェイスなどなど。

にしても,どれも高い。

そこで長谷川さんのトドメ「いいの買っておきね。ずっと着れるで。毎年変えるわけじゃないんやし。」

簡単に納得する。

結局デュベティカの6万ほどするものに決めた。

さて,次は長谷川さんのだ。長谷川さんは,三度の飯より洋服好き。

そんな長谷川さんにはお好みがブランドがある,その名はFOXY。

月9「やまとなでしこ」で松嶋奈々子が来ていたブランドらしい。

だが,その店は名古屋や大阪など都市部にしかないため,名古屋いこうとよく言われるようになった。

ただちょうどその時,隣の県にブースを出すという知らせを受け,その展示会に行くことになった。

長谷川さんの後ろについて,ヒョコヒョコと展示会場に入った。そんなに大きな会場ではなく,ホテルの宴会場ぐらいの大きさ。ところ狭しと洋服がかけられている。

「これあったかーい,可愛いし」と言って手に取っていたのは,フードのついた見た目も暖かそうなアウター。僕には丈の短い,モコモコしたパーカー?のような商品。

長谷川さんは即決型なので,他の商品もちらちら見たかと思うと,これにしようかなと2つ見せてきた。

そして,お決まりの「どっちがいい?」

こういう時は何が正解なのか未だに分からない。

ただし,「どっちもいいね」と「どっちでもいいね」の差ぐらいは弁えている。

「どっちも似合うけど,何で迷ってる?」と言うようにしている。悩みポイントを絞った方が,コメントをしやすいからだ。

結局本人の答えは決まっているだろうから,それに寄り添う形で同意,後押しするのがこの場合の男の役目だと思う。知らんけど。

結局決めたのは,モコモコフード付きの方だ。いくらか聞いていなかったので,尋ねた。

「30万」

は?バカなの?と思った。

確かに暖かそうではあるし,実際暖かいらしいのだが,それにしても・・・

何も言うまい。

プラスしてブローチを買っていたが,それも値段も全然可愛くない。

年収が違うのもあるが,やはり価値観の違いなのだなと思った。僕には,服1着それも冬限定のものに月給はかけられない。

長谷川さんの心の豊かさに繋がるのは洋服なのだ。

そのために彼女は働いている。

さて,自分の心の豊かさに繋がるものって何だろう。

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