教師と保護者の恋愛小説「わかっているけど」(36)

小説

大雪を乗り越え、新車で購入した愛車に傷がついているのにショックを受けた春。

新年度を迎えた。担任は4年生。初めて受け持つ子だ。心機一転気合が入る。

長谷川さんとの付き合いも2年になろうとしていた。

4月の終わりだったか、同僚がUSJに行こうというので誘われた。

テーマパーク好きが2人もいると、そういう話になる。

前に行った時にお得というだけで年間パスポートを買ったが、結局全然行かなかった。

やはり僕はテーマパークが苦手なようだ。

長谷川さんの娘、やよいちゃんもUSJに行きたいと言っていたため、同僚は別車で、僕と長谷川さんとやよいちゃんで行くことにした。

朝早くに出たが、さすがのUSJ。すでに列ができている。

テーマパーク嫌い①列に並ぶのが面倒。

列に並ぶだけで1日が過ぎていくと言っても過言ではない。何時間も並んだかと思うとアトラクションは5分で終わる。お金があれば、スイスイ行けるチケットもあるみたいなのだが、金にものを言わせているみたいで気が引ける。いや、本音はチケットが高いだけだ。

テーマパーク嫌い②人混みが嫌。

なんせ人が多い。避けながら歩くだけでも一苦労。どっと疲れる。USJはややもすると知っている顔に合わないとも言い切れない。そのため、一応警戒はしていた。しかし、ミニオンのところで前年に担任していた子家族を発見してしまった。僕は並んでいるためそこから動けない。顔を壁の方に向けながら家族があっちに行くのを心の中で願っていた。くるなくるくるな・・・

僕がUSJにいること自体は別になんでもないのだが、やよいちゃんとその子が同級生なのでまずい。

何でやよいちゃんと前担任が一緒にいるのか。しかもこんなところで。ん?え?まさか・・・

という展開が目に見えている。

脇汗をしっかりかいたところで、家族が別の方向に向かっていくのを横目で確認した。

心を撫で下ろす。

あぶね。

テーマパーク嫌い③いまひとつ気分が上がらない。

キャラクターを見ても、グッズを見てもいまひとつ欲しいものもなければ、愛着も湧かない。かぶり物をしたいとも思わないし、キーホルダーが欲しいわけでもない。かといって乗り物に乗りにきたわけでもない。みんなが楽しんでいる空気だけ吸いにきたようなものだ。

甲子園に行くほうが何倍も興奮するし、吉本やメイド喫茶に行くほうが何倍も笑える。

しかし、やよいちゃんが楽しいのならいい。少しお父さんになった気分。

33歳で小5の娘も悪くない。

ただ、血はつながっていないのに、いつもやよいちゃんと僕が親子に間違われる。

理由は長谷川さんだ。長谷川さんの目は僕の2倍大きい、パチクリ二重お目々。

一方、僕とやよいちゃんは切長の一重。

一緒に歩いているとよその家族がヒソヒソと「お父さん似やね」と言っているのがたまに聞こえる。長谷川さんは、それを聞いていつもケラケラ笑っている。

いやいや、母親以上に他人に似るて。

それも旅の思い出としては面白い。

そんなこんなでたくさん買い物をして帰ってきた。

歩き疲れ、人に疲れ、運転に疲れクタクタ。

やよいちゃんの「買ってくれてありがとう」を聞くと、こういう行事もたまには必要なのかもしれない。

なんて思う。

世のパパに敬意を表したい。

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