教師と保護者の恋愛小説「わかっているけど」(41)

小説

長谷江さんは某大手保険会社に勤め、営業として働いている。

1件でも多く契約を取ろうと毎日奔走しているのだが、彼氏である僕にも商品を勧めてくる。

前はこんな商品を勧めてきた。

・毎月5000円ほど預けていく。
・5年後に預けた分が返ってくる。その繰り返し。
・忘れた頃に臨時収入があるため結構喜ぶ人がいる。

僕は基本的に自分で計画を立てて貯金できるタイプだ。

だから、そんな商品がなくても貯めていける。

聞けば聞くほどその商品の魅力が分からなかった。

そこで、「トータルはどうなの?預けた分はきっちり返ってくるの?」

「ううん。ちょっと減るw」

「・・・誰がするんじゃ!w ようそんなもん彼氏に勧めてきたな。」

ケラケラと笑う長谷川さん。

本当に保険の営業の口車に乗せられてはいけないと思った瞬間だ。

今はある程度金融リテラシーが身についたので、全く保険には入らない。

しかし、この頃は勉強前だったのでいろいろと長谷川さんに入らされた。医療保険というより、貯蓄型年金だ。貢献したいという思いや貯蓄型ならという思いでいくつか加入していた。

結局ほとんど解約したけれどw

そんな長谷川さんがある商品をごり推ししてきた。こんな商品だ。

・運動する人にとっては保険料が割安になる。
・運動する度(歩数)でポイントがもらえて、会員ランクが上がり保険料がさらに安くなる。
・ポイントでスターバックスやローソンの飲み物がもらえる。
・アディダスの商品が30%オフで購入できる。
・提携ホテルを格安で泊まれる。
・他にも色々特典がある。

うーん、それなりにお得そうな商品ではある。

仕事では歩き回るし、アディダスは好きだし、ローソンもそれなりに使う。

しかも、ちょうどApple Watchの購入を検討していたため、魅力的な提案だった。

「ほなやってみようかな。」と加入することにした。

それが8月。9月からその商品が開始されるということで、Apple Watchを買ったり、iPhone8にしたりと準備を進めてきた。

やるからには損をしたくないというのが人間の心理。どうすれば最大限の特典を得られるか、損をしないかを操作しながら調べた。

おそらく、その商品についてそこらへんの営業よりも詳しくなっていた。

長谷川さんが「これどうするの?」と僕に登録の仕方などを聞いてきたくらいだ。

・・・なんでやねん、保険売ってる顔やろ。

長谷川さんは、スマートウォッチどころか時計の1つもつけていない。

・・・なんでやねん、Apple Watchつけな始まらん顔やろ。

もも風でお送りしましたけれども、本当に機械音痴は困ります。

長谷川さんはパソコンの1つも持っておらず、触ったことがないという希少種。

触るのは会社のタブレットのみ。しかも保険入力特化用。

この間は、「クリック」のことを「クイック」と言っていた。

バレーボールでもするのだろうか。

しきりに「クイックが分からんくてさ、あれ右で決定やっけ。それが左でクイックしてもてさ。」

全部違う。

空いた口が塞がらないとはこのことだ。

あのさ・・・と訂正したが、何の気なしだ。

長谷川さんは、できないことに関してはちょっともできないため気持ちがいいし、ネタになる。

この人を見て思う。

人は助け合って生きているのだなと。そして、「助けて」と言えることもまた生きる術なのだと。

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