教師と保護者の恋愛小説「わかっているけど」(42)

小説

長谷川さんは動物が好きではありません。

犬を見ても猫を見ても家畜としか思わない人です。

僕の家もペットなんて飼ったことありませんでしたし、僕も犬や猫を飼おうなんてこれっぽっちも思っていませんでした。

ある日大型ショッピングセンターのペットコーナーにふらっと寄った時のことです。

アメリカンショートヘアーの子猫の可愛さに衝撃を受けました。

あまりにも可愛すぎたのです。

それと同時に閃きました。

猫を飼えば、長谷川さんとの関係にも変化が起こるのではないか。

というのも、長谷川さんといるのは楽しいのですが、離婚して数年そろそろ僕自身のライフステージも上げていかなかないとなと思っていました。

しかし、別れを切り出そうものならちんちんをちょん切られる恐れがありました。長谷川さんは、平成の阿部定なのです。

他の女性をと思っても、長谷川さんを知ってから他の女性がいまひとつ魅力的に見えません。

そんな時に、猫が一役買ってくれるのではないかと思ったのです。

よし!ということでそれからというもの、YouTubeやブログなどで猫ばっかり調べていました。

HIKAKINが猫を飼ったのもちょうどこの頃だったように思います。食い入るように見ていました。

ただ、犬も猫も飼っている同僚からの犬の方がコミュニケーションがとれて可愛いという意見に大きく揺れていました。

そこで犬も視野に入れてペットショップなどに通うようになりました。

長谷川さんは「なんで猫(犬)なんて飼うんやって!」と怒り顔でしきりに言っていました。

いい傾向です。そうであれば、もはやどちらでもよくなってきました。

だいぶ犬に考えが寄ってきた時に、あるペットショップで今の愛犬との邂逅がありました。

アプリコット色のトイプードルとビションフリーゼのミックス犬。手のひらサイズの女の子。

だいぶペットショップを回った末の決定なので、一目惚れというわけではありませんが、それに近いものがありました。

「その一目惚れ、迷惑です。」というCMがありますが、気持ちはすごく分かります。

長谷川さんと娘のやよいちゃんと一緒に選びに行ったのですが、娘のやよいちゃんも気に入っていました。

長谷川さんも一緒に「可愛い〜」と言って離しません。

あれ?と思いましたが、その時はあまり気にしていませんでした。

買うことは決めましたが、ワンコがまだご飯がうまく食べられないとのことだったので、3週間後の受け渡しとなりました。

帰りの車の中では、名前を何にするかで盛り上がりました。

あれ?盛り上がっている・・・

長谷川さんは次から次への案を出してきます。

終いには「ローレンス」と言ってきましたが、それに決めなくてほんとによかったと思っています。

みんなが振り返ります。

何よりワンコがかわいそうです。

それからというもの、ベッド、ゲージ、水飲み、トレイを買いにいきましたが、全て長谷川チョイス。

最初の3週間を長谷川さん家で面倒見ることもすんなり了承。

この時に確信しました。

間違えたと。

あんなに家畜呼ばわりしていた犬を、溺愛するようになっていました。

「人にも言われるんやけど、自分でもビックリ💕」という始末。

こうして、ペット大作戦は脆くも崩れさり、むしろ子どもを授かったように結びつきを強くしたのでありました。

やれやれ。

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