教師と保護者の恋愛小説「わかっているけど」(43)

小説

ワンコを飼うことになってから、それはもう新しいゲームを買ってもらった子どものように帰るのが楽しみ。早く帰りたい。

そんな気持ちで仕事をしていました。

ちょうど買った時期が春休み手前だったため、春休みは定時退勤して毎日のように長谷川さん宅に通いました。

というのも、最初の1ヶ月ほどは長谷川さん宅で飼ってもらうことにしていました。

子犬の場合はあまり目を離せないので、仕事で10時間も家を空ける自分には厳しい状況だったからです。

ペット禁止の賃貸ですが、長谷川さんの方が時間が融通がきくことも大きな理由でした。

動物愛護団体からは「面倒みれんもんが飼うな」と怒られそうですが、確かに「ちょっとだけ」「少しだけやで」とラブホに誘うような文句で逃げることしかできません。

長谷川さん宅に着いたら、「今日どやった」と様子を確認。

長谷川さんは二の次です。

モコモコの毛に覆われた子犬の可愛さといったら、僕の語彙力では形容できないぐらい愛くるしいものがあります。

子犬にはまずトイレを教えないといけませんから、5分遊んでゲージに戻す。おしっこをしたら褒めておやつをあげる。5分遊ぶ。ゲージに戻す。これの繰り返しです。

すると、自分からトイレに行っておしっこをするようになるのです。

そんなときはもう歓喜です。

「えらかったにぇ〜おしっこできたね💕あーえらかった。」

30も超えた男がにゃんにゃんです。

こんなところは、職場では見せれません。

いかにスマートな男に見えるかに腐心していますから。

長谷川さんは長谷川さんで「ペロ、おいでママんとこ」と家畜呼ばわりしていた人がこの変わりよう。

すでに「ママ」気取り。

「パパ」である僕は負けじと、「ペロこっち、パパんとこおいで」と対抗。

なんでしょうか。この風景。

子はかすがいと言いますが、ペット大作戦と銘打った思惑が、離れるどころか離れないためのかすがいとなってしまったんで・す・YO!

あーいとぅいまてぇーん。

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