営業をやっている長谷川さんは,さすが人付き合いが上手い。
どんな会社やお店にいっても,すぐに相手の懐に入る。
長谷川さんの歯に絹着せぬ物言いがウケるのだろう。
その大半が似てる芸能人を言うことなのだが,出してくる芸能人が古い。
誰が「車だん吉」を知っていると思うのだろうか。
36歳の僕でギリギリだ。お笑いマンガ道場なんて若者が知るわけない。
車だん吉は一例だが,他にもググらないと分からないような芸能人ばかり出してくる。
そしてググると大体似ている。
自分で検索してみせてくれるのならまだいいのだが,長谷川さんのスマホは1GBしかないため,相手にググらせる面倒な人だ。
そんな長谷川さんも隣人とはほとんど会話も交わさない。
関わりたくないのだ。
関わりたくないけど,関わらざるを得ないところが集合住宅の厄介なところだ。
今日は隣人トラブル第二弾を紹介する。
長谷川さんは娘のやよいちゃんに対して,ドぎつい言葉で怒る。
僕も何度か遭遇しているが,「そこまで言わなくてもいいのに」とか「そんなことで怒らんでいいのに」と思うことが多々ある。
長谷川さん自身何でもパパッと取り掛かりも早く,早く終わらせる性分なので,のんびりしているやよいちゃんが許せないのだ。常に「横着な!」と口にしている。
母娘でこんなにも性格が違うものかと思うほどだ。
まぁやよいちゃんもやよいちゃんで,余計なことを言ったり,ワガママなところがあるのでどっちもどっちなのだが。
2人のやりとりを見るたびにうんざりして帰りたくなるw
最近は「またけ、うるさいな。あのな・・・」と言えるようになったが、その時はそういう感じではななかった。
そんなある日、仕事帰りに電話をしているとこんなことがあったようだ。
日中,長谷川さんがやよいちゃんのわがままを叱った。
きっかけは,やよいちゃんの横着な態度だ。
プチンときた長谷川さんは(いつものように),
「一銭も稼げんもんが偉そうに」
「ほんなにイヤなら施設でもどこでも行けや!」
「ここがイヤなんやろ?早く出ていきねや」
と捲し立てた。
やよいちゃんは,「いやだ」なんだとわんわん泣いていたようだ。
一悶着あり,ようやく落ち着いたところにインターホンがなったようだ。
部屋のインターホンを見ると制服姿の男性が2人立っていた。
「すみません,長谷川さんのお宅ですか。警察ですが,少々開けてもらってよろしいですか。」
長谷川さんは何事かと思い,ドアを開けた。
「はい,何でしょうか。」
「あ、すみません、近隣の方から子供さんの泣き叫ぶ声が聞こえたと言うことで、様子を伺いにきました。お子さんいらっしゃいますか。」
長谷川さんは「あ、はい」とやよいちゃんを玄関先に出させた。
やよいちゃんの様子から警察官は「大丈夫そうですね」と去っていたようだ。
長谷川さんは虐待容疑で通報されたのだw
長谷川さんは電話ごしにプリプリ怒っているが、僕は「そりゃそうやわ」と笑わずにはいられない。
「電話したの絶対隣やわ!腹立つ!引きこもり韓国オモニのくせして!」
「はいはい、汚い言葉を使わない。それやでw」
「ほやが、ほんなもん!ずーっと一歩も出んと家にいて。暇人が」
長谷川さんは女手1つで育てているので、働かない女が大嫌いなのだ。
それも相まって憎さ倍増。
小さな市の小さなアパートにイスラエルとパレスチナを見た気がした。
そして、長谷川さんを「S市の火薬庫」と呼ぼうと思った。
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