教師と保護者の恋愛小説「わかっているけど」(52)

小説

長谷川さん家を買う。

皆さんは持ち家派だろうか。

「賃貸vs持ち家」は議論になるところだが、結局はその人の目的による。

税金、維持費、購入費などトータルすると金銭面から言えば、賃貸がコスパがいいらしい。

しかし、一家の主人になればやはり自分の城は構えたいものだ。所有感がまるで違う。

持ち家は多少の金銭面を犠牲にしてでも、持つ価値のあるものだろう。

だが、家を持つとなると今日決めて明日買えるものではない。

何千万もするものだ。吟味を重ねて買うべきものであるはずだ。

僕なんかは、特に高額な物になればなるほど慎重になる。

注文住宅か建売か。立地、間取り、導線、素材、そもそもの業者選び、騙されてないかなど考え出したらキリがない。

そんな数限りない選択肢がある中で、これに決めるということは、あれを断つということ。

それを「決断」というが、後悔のない決断をしたい故に、下調べには余念がなくなる。

自分で本を買い、YouTubeやインターネットで調べ、業者を調べ、内見に行く。

比較、分析、検討の繰り返しだ。

もう想像するだけで時間がかかりそうで嫌だ。w

流石に「人生の3大買い物」に入るだけあって、そんなにサクッ買うものでも買えるものでもない。

ところがどっこい、僕とは対照的な長谷川さん

「もう買ってもた」

え?

バカなの?

靴を買うんじゃないんだから。

よっぽど3万のワンピース買うほうが迷ってたやん。

・・・もう何も言うまい。

シングルマザーでそれだけの買い物をしたことに、ただただ拍手。

それに、決断が早かったからこそいい面もあった。

2021年に住宅を購入すると制度面で優遇されることが多くあったのだ。

長谷川さんが即決断したからこそ、あやかれた措置だ。

僕みたいに、吟味していたら逃していたかもしれない。

ファーストチェス理論というものがある。

チェスゲームをする際、

5秒で考えた手と30分かけて考えたては86%同じという理論だ。

ゲーテも言っている。

「永いこと考えこんでいる者が、いつも最善のものを選ぶわけではない。」

確かにそうかもしれない。僕にも経験がある。

長いこと写メ日記を見て考え吟味したにも関わらず、とんでもないハズレを引いたことが。

吟味している間に、女神は他の客の元に行ってしまっているかもしれないのだ。

「後悔なき決断」か「遅れなき決断」か、それが問題だ。

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