教師と保護者の恋愛小説「わかっているけど」(54)

小説

長谷川さん 犬を飼う

以前書いたが、長谷川さんは犬を畜生としか見ていなかった。

そんな長谷川さんが、僕がペロを飼うようになると犬をちゃんとファミリーとして認識するようになった。

ま、ペロに関しては一緒に買いにいったし、パピーの1ヶ月は長谷川さんが家で面倒を見てくれたから、子どもに近い存在だったのだろう。

少しずつ犬への見方は変わってきており、関心は高まってきてはいる。

ただ、どんな犬でも関心を示すかというとまだそうでもない。

でかい犬は怖いし、不細工な犬は嫌いだw

ドッグランに行った時には、よだれを垂らしながら迫ってくるブルドックから悲鳴を上げながら逃げていたw

しかし、そんな長谷川さんが犬が欲しいというのだ。

人は変わるものだ。

犬を買った後にも長谷川さんの同僚はみんな口を揃えて言っていた。

「所長が犬を飼うなんて信じられません。」

それぐらい犬とは無縁だった長谷川さんが犬が欲しいというのだ。

只事ではないが、長谷川さんの思惑も分からないではなかった。

娘が犬が大好きなこと、娘との会話のきっかけになること。

それが第1の理由だ。

あとは、ペロと一緒にお出かけしたいとかペアルックにしたいとか、そういう思いもあったようだ。

僕としてもペロの遊び相手が欲しかったので、僕は賛成した。

家と同様、長谷川さんの決断は早い。

よく行くペットショップのホームページを見て、可愛いと思ったトイプードルをすぐさま取り寄せた。

この人は週末にペットショップ巡りとかしないのだろうか。

1回だけ「ワンニャンカーニバル」といって大きな会場に犬や猫を販売しにきてるイベントに行ったが、業者の人間が怪しくてやめたw

取り寄せたのは、おそらくそんなに大きくならないであろうシルバーのトイプードル。35万。

比較的安い方だ。店にいる小さいトイプードルは50〜60万はする。

取り寄せたという連絡をもらうとすぐに店に会いに行った。

大人になると毛色がシルバーになるのだが、パピーの頃は真っ黒。

人懐っこくてお目目もくりくり。モップみたいな体で一生懸命跳ねている。

「ね、買ってや。」

「は、買えるか!」

いつも一旦振ってくる。

九州男児なら「おう、出したる!」となるのかもしれないが、僕は北陸男児なのでそうはいかない。

だけど、「男児」がついているのでこうすることにした。

「郵貯から15万なら出してあげる。」

郵貯は、僕と長谷川さんで毎月1万出している共同貯金だ。

本当は旅行など両方に関わることに使うお金だが、「まぁペロの遊び相手にもなるし。」と思い、出すことにした。

その日はまだ契約日ではなかったため、店を後にした。

店を出てからも娘と長谷川さんは「可愛い」を連呼していた。

確かにペロよりも美形かもしれない。

長谷川さんは、「ゲージも買わなあかんし、ベッドは何にしようかな」とワンコとの生活に胸を躍らせていた。

そう、まだこの時は・・・w

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