教師と保護者の恋愛小説「わかっているけど」(49)

小説

長谷川さんはスピリチュアルなことが割と好きだと述べた。

占いも信じる方で、朝の電話ではわざわざ知らせなくてもいいのに

「今日、水瓶座最下位やったよ。気をつけねや。」

と言ってくる。

この場合は「言ってくれる」としておいた方が女性ウケはいいのだろうか。

まぁいいのだが、最下位と知らなかったら、それなりの気分で過ごせたのにと思う。

偶然の出来事もあるにはあるが、ほぼ必然的に起こることだと僕は思っている。

だから本当はどの出来事にも何かしらの原因がある。

しかし、最下位と言われた途端、最下位を理由にしてしまうきらいがありはしないだろうか。

「スネをぶつけたのは最下位だったからや。」

「やっぱ最下位やったわ、保護者がクレームを入れてきたもん。」

このように。

しかし、スネをぶつけたのは自分の不注意、保護者からのクレームは配慮がなかったせいだ。

大体自分に原因があるものだ。

ただ、たまには自分を責めたくない日もあるだろう。

そんな日の占いだ。占いのせいにすればいいと思う。そのために占いがあるような気さえしてきた。

余談はこのくらいにして、スピリチュアル長谷川さんはたまにお客さんのNさんという人と話すらしい。

このNさん、俗にいう「見える」人らしい。

Nさんは、その人物の写真を見ると憑いているものが見え、声も聞こえるという。

ホントかどうかは怪しいものだが、長谷川さんは信じているらしい。

「守護霊がお二人ついていらっしゃって、守ってくれていますよ。」

などと、聞いたことを真に受けては安心したり心配したりしている。

気休め程度だろうし、何か高額なものを買うわけではなかったのでとりあえず話半分に聞いていた。

ある日長谷川さんは自分だけでなく、僕やペロの写真も見せてみたらしい。

するとNさんからこんなメールが来た、とやりとりを見せてくれた。

Nさん
Nさん

ワンちゃんから、みんなの話を聞いて、仲良くしてほしいなと伝言を承ったので伝えます。

長谷川さん
長谷川さん

みんなの話とは?

Nさん
Nさん

長谷川さんが話を聞いてくれないと訴えていますよ。

長谷川さん
長谷川さん

笑!私がワンちゃんの話を聞かないということですか?

Nさん
Nさん

ワン、ワン🐶(そうだ、そうだ)って言ってますよw

僕も同調して「そうだ、そうだ」と言ってやった。Nさんの言うこともあながち間違っていないw

僕の方がNさんを信じ始めた。

ペロも気ままだが、長谷川さんも気ままで、その娘やよいちゃんも気ままだ。

気ままな女ばーっかり。

気ままな女3人といると疲れて仕方ない。

さらにNさんはこう続けていた。(ちなみに長谷川さんのお父様は亡くなっている)

Nさん
Nさん

お父さんは、長谷川さんに同じ話をずっとしていますが、わかりますか?

長谷川さん
長谷川さん

分からないんです。何を話しているんですか?

Nさん
Nさん

1番最初に話した、他人の話をキチンと聞きましょうですよ。お父さんからも、長谷川さんは自分に得にならないと判断したら、すぐに相手の話を流していると報告を受けています。心当たりはありませんか。

長谷川さん
長谷川さん

心当たりアリアリです。やよいからも、先生からもよく言われますw

以後気をつけます。

この後も続くのだが、Nさんの言っていることが当たっていて面白くなってきた。

長谷川さんは、興味のないことには相槌がそっけなくて、興味のないことが丸わかりなのだ。

最後にはNさんに「行動に気をつけないと、彼氏と別れますよ」と言われ、

長谷川さん
長谷川さん

常に人の話を聴き、感謝の気持ちを持って行動するよう心がけます。

と警察にも動じない長谷川さんが、ただの信者になっていた。

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